悪い知らせや悲しい知らせを覆い隠すかのように
嬉しい知らせが重なった。
ひとつめはAさんという人の話。
Aさんは、僕が大学に入った頃すでに大学院生だった人だ。
Aさんは文系の博士課程で研究活動を続けていた。
文系の大学院生をめぐる現状は厳しい。
たとえ博士号を持っていても、その身分は保障されない。
そのAさんが、旧帝大の1つである大学で、4月から教員になることが決まった。Aさんの子どもはもう4歳になるとか。嬉しいニュースだった。
Aさんからいただいた賀状にはこう書かれていた。
人間を相手にした相互行為はなかなか大変ですが、批判精神だけは持ちつづけて論文を書いていって下さい
と。この一言が、僕には刺激になった。
ふたつめは、今年卒業になる2人の後輩BとCの話。
日本一を決める大会で
BとCがそれぞれ5回戦の相手に勝利し入賞した。
試合が終わったあとに、2人はそれぞれ僕のところに来た。
Bは「halさんのおかげです」と言った。
褒められたり感謝されたりするのは正直苦手なのだが、昨日のその一言は素直に聞くことができた。
5回戦で当たる相手に勝利するため、Bとは大会の直前に僕に練習を依頼した。先週の3連休は、ずっとBとの練習だった。
こうして練習を依頼されるのは今回で何回目になるだろう。Bは高校時代からうちの大学の練習に通っていたから、Bとは5年間という長い時間ずっと練習し続けてきたことになる。
5年間という時間は長い。Bとの練習を続けるうちに僕はいつの間にか上達し、今の僕がある。この5年間、ほかの誰よりもBと練習をする時間が長かった。それが最後になるかと思うと、なんだか寂しい気もする。
ここ1年間くらいで多く練習をするようになったCとは、12月からずっと朝練をしていた。この土地は寒い。昨夜9時の気温は0度だった。朝はさらに冷える。暖房器具のない朝の練習。僕に気を遣ったCが、朝ごはんを作ってきてくれることもあった。
Cの対戦相手と同じ用具を用意し、僕は朝6時には起きて体育館に通った。Cの練習の質は高い。Cとの密度の高い1時間ばかりの練習で僕は毎朝ヘトヘトになっていた。何度も日本一のタイトルを獲得しているCの競技へのこだわりは、日々の取り組みにも表れていた。
この1ヶ月と半月は、BとCの相手に加えて、本業の方でもいくつもの発表が重なった。指導教官との面談は今月に入ってから毎週のようにある。正直なところ身体はボロボロで、睡眠時間は明らかに少なくて、友人が「疲れてるよ」と言って僕を心配することもあった。ある人には「覇気がない」と言われた。疲れがピークで研究室での作業がはかどらないときには、全てを投げ出したい気持ちにも駆られた。それでも、BとCのサポートを続けることに意味はあったと思う。自分自身のためにも。
僕のささやかな競技活動がこんな大きなところに接続されたことに僕は感謝しよう。卒業後もBとCは競技を続ける。今度はプロという形で。
そして、
僕は僕でまた別の道を歩き続けるために、今日もまた頑張ることにしようか。Aさんの励ましを思い出して...。
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